解析研究

ゲノムについて

ある生物がもつ遺伝情報のすべて(いのちの設計図)をまとめてゲノムといいます。
すべての生物は細胞からできており、ヒトは約37兆個の細胞でできています。この細胞の中の核という部分に染色体が詰め込まれ、私たちの遺伝情報がDNAという物質として保存されています。

dna2

人のゲノムは文字に換算すると30億文字、朝刊25年分の文字数になります。
DNAは、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という4つの物質(塩基)がつらなってできています。ヒトゲノムには個々人で約1000万箇所の違い(多型)がありますが、その中のたったひとつの塩基が違うだけで、生まれつき病気になったり、個人の体質に影響することがあります。

 

どんな違いが出る?
  • 二重まぶた/一重まぶた
  • 髪の毛、肌、目の色の違い
  • 耳あかが乾いている/湿っている
  • 太りやすい/太りにくい
  • お酒に強い/弱い
  • 病気になりやすい/なりにくい
  • 薬の効き方 など人によって様々な違いが出ます。

 

なぜ遺伝情報について調べる必要があるの?

たくさんの人のゲノムを調べることによって、飲酒と病気の関連を調べたり、アレルギーを予防したり、効き目の高い薬を予測することが将来可能となります。

病気は、私たちが両親から受け継いだ遺伝的な素因(ゲノム配列の多様性)と環境(ストレス、食事・運動などの生活習慣)が複雑に影響しあって起こると考えられています。単一遺伝子疾患といって、遺伝的な素因だけで起こるものもありますが、糖尿病やがんなどの他の多くの病気は、遺伝的な素因と環境因子の両方が複雑に影響し合って起こることから、「多因子疾患」と呼ばれます。

例えば、栄養の偏った食事や運動不足は身体によくないといわれています。しかし、同じような食生活をしているのに糖尿病になる人とならない人がいますし、同じ家で生活していても、アトピーになる人とならない人がいます。この違いは、遺伝的な素因と環境の違いによるものと思われます。

したがって、病気の発症と環境因子の関連をみるためには、どのような環境で生活しているか、遺伝的な素因(どのようなゲノム配列を持っているか)はどうか、といったことをあわせて詳しく調べる必要があるのです。多因子疾患のおこるメカニズムは複雑で、現在、世界中で研究が行われていますが、病気にかかりやすい遺伝子を持っている人に、病気にならないための生活習慣の情報を提供していくのが多因子疾患の研究の目標です。